大名婚礼調度とは、その生活を彩る化粧具・文房具・遊戯具・武具・飲食具・運搬具から、その衣装・屏風といったものまで含まれ、その量・種類は膨 大なものでありました。

これらの調度類が調えられたのは寛永期(1600年代初頃)といわれ、
以降その制が徐々に定まりその量や質、その種類は格式によって多少の差異はあるものの、
将軍家・大名・公家間の婚礼には必ず製作されました。
また大名婚礼調度の一大特徴は、
調度類はすべて統一された意匠で蒔絵され、その家紋を散らしているということです。

当館には松浦家33代誠信(さねのぶ)(安靖)の娘スメの稲垣家輿入時の婚礼調度で、
スメの没後形見として松浦家に贈られたものと、松浦家35代熈(ひろむ)(観中)夫人蓁(しん)姫の婚礼調度を中心に収蔵しています。また婚礼調度品には雛人形や雛道具も含まれていました。
当館では毎年雛祭りの季節になると雛人形を展示しています。これは文化5年(1808)に寛政の改革で有名な老中松平定信の娘蓁(しん)姫が、松浦家第35代熈(ひろむ)に輿入れの時に持参した雛人形です。
二対の人形(芥子雛)と梨子地に金の蒔絵で松竹梅が施された化粧道具や飲食具または文房具など百点にものぼる雛道具は大変豪華で精緻なものです。